(仮訳)ケン・ローチ:「もし怒りを感じていないとしたら、あなたは一体どんな類の人間なんですか?」①/10

Ken Loach: ‘If you’re not angry, what kind of person are you?’

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『キャシー・カム・ホーム』や『ケス』の頃から、彼はずっと支配層にとっての悩みの種だった。そして80歳にして、これまでで一番怒りに満ちた映画を撮った。

ケン・ローチが座っている。両手はしっかりと椅子を掴み、頭はすくめた肩に納まり、簡潔明瞭な疑問を携えて。まったく遠慮する様子もなく。そして、口を開いた。

ローチは半世紀もの間、怒りに打ち震える映画を作り続けてきた。そして、これまでよりさらに怒りに満ちた新作がもうすぐ公開される。『わたしは、ダニエル・ブレイク』2016年カンヌ映画祭パルムドール受賞作であり、イギリスの給付金制度に打ちのめされた男の物語だ。致命的な心臓発作を起こし、医者からはもう働けないと宣告されたが、労働年金省には傷病手当の資格適用外と判定される。そして、就くことのできない形ばかりの職探しをするが、真面目にやっていないとみなされ求職者給付も停止されると、ブレイクはみるみる窮地に陥ってしまう。この映画のあまりにシンプルで残酷なさまは、寓話のようでもある。そしてまた、凄まじく心を揺さぶりもする―特にフードバンクでのシーン、つまり、ブレイクの友人となった若い母親が自制心を失って殆ど野蛮ともいえるふるまいをしてしまう場面では。


「怒っているか、ですか?うーん、、、」ローチはやっと聞こえるくらい小さな声で言った。そして、彼と相棒の脚本家ポール・ラヴァティが取材中に出会った人たちのことを話した。それは、冷蔵庫が空のまま3日間ろくに食べていなかった若い男性のことや、フードバンクに通っていることを恥じていた女性、臨時シフトの為に午前5時半に仕事の列に並ぶよう言われ、その1時間後に、お前は要らないと追い返された男性のことだ。「ただ生き延びるためにこんなに屈辱を受け続けるんですよ。それに対して怒りを感じていないとしたら、あなたは一体どんな類の人間なんですか?」

私たちはロンドンのソーホーにある彼の事務所近くのカフェに居る。ローチはコーヒーとクロワッサンを注文した。もちろん、大人しく柔和な調子で。しかしこの大人しさはあてにならない:コーヒーを注文するときでさえ、彼は自分がどうしたいのかはっきりと分かっている。「水道水を小さいグラスでください、それと冷たい牛乳をほんの少し。ありがとう」と言ってから、話を続けた。「ええと、そうそう、本当に沢山の人たちに会いました。屈辱を味わわされ、くじかれ、この世界でなんとか持ちこたえようというあらゆる気力を奪われてしまった人たちです。」

(仮訳)ケン・ローチ:「もし怒りを感じていないとしたら、あなたは一体どんな類の人間なんですか?」②へ続く

※元記事:
https://www.theguardian.com/film/2016/oct/15/ken-laoch-film-i-daniel-blake-kes-cathy-come-home-interview-simon-hattenstone

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