"Sorry We Missed You" 『家族を想うとき』 2019年カンヌ国際映画祭記者会見 ①/7

登壇者(発言時表記): ケン・ローチ(KL) / レベッカ・オブライエン(ROB) / ポール・ラヴァティ(PL) / クリス・ヒッチェン(KH) / デビー・ハニーウッド(DH) / リース・ストーン(RS) / ケイティ・プロクター(KP)

SORRY WE MISSED YOU - Press conference - Cannes 2019
with Henry Béhar moderator / Rebecca O’Brien producer / Rhys Stone actor / Katie Proctor actress / Kris Hitchen actor / Ken Loach director / Debbie Honeywood actress / Paul Laverty screenplay / Robbie Ryan cinematography

*留意点*
  • 初めてこのブログを読まれる方は↑TOPメニューの「¿(仮訳)?」も併せてお読みください。
  • 今回は記事の翻訳ではなく、記者会見の動画(音声)聞き起こし→粗訳という形になり、聞き起こしの時点で拾いきれない言葉もあり、より意訳傾向が強くなっています。そのため、タイトルにも「(仮訳)」をつけませんでした。(もう少し細かい話が気になる方は→こちら
  • ()内は訳者註です。また、質問者、その他用語についての参考リンク等がある場合は「☆」で表記しています。
  • "struggle"という単語(動詞/名詞)が繰り返し使われていますが、和訳では文脈で言葉を変えているため、元の単語がそれとわかるよう「★」をつけています。
  • 特に聞き取りに自信のない箇所については「*」と共にその旨記載しています。
  • 各埋め込み動画は該当箇所から始まるよう頭出ししたものです。
SORRY WE MISSED YOU - Press conference - Cannes 2019

司会Henry Béhar: こんにちはみなさん、ようこそ"Sorry We Missed You"の記者会見へ。ここで私たちと一緒に座っている方々は、ほぼ真ん中に座っていらっしゃるのが、カンヌにあまりにしょっちゅう来られるので、カンヌの市民権があるか、市民権を与えるべきと思われているケン・ローチ監督です。

KL: へへ (笑顔でサムアップ)

(会場拍手)

司会: カンヌで二度もパルムドールを受賞したのは同じ少人数のチームの皆さんです。最初は2006年の『麦の穂をゆらす風』、そしてその10年後の『わたしは、ダニエル・ブレイク』です。そして私の隣の女性をご紹介します。彼女はケン・ローチ監督の永遠のプロデューサー

ROB: 永遠、、、確かに

司会: レベッカ・オブライエンさんです。そしてテーブルの一番向こう端に座っているのが脚本家のポール・ラヴァティさんです。

(会場拍手)

司会: そして今皆さんがご覧になった映画は、勿論ある一家の物語が大部分を占めます。その家族をご紹介させてください。父親のリッキー役クリス・ヒッチェンさんです。

(会場拍手)

司会: ローチさんの反対隣におられるのが母親アビー役のデビー・ハニーウッドさん

(会場拍手)

司会: 反逆児セブ役、反逆児と言ってしまいましたが、ティーンエイジャー役のリース・ストーンさん、そして娘ライザ・ジェーン役のケイティ・プロクターさんです。

(会場拍手)

2:42

司会: さて、あなた方家族役の皆さんについて私たちは何も知らないのでお訊きしたいのですが、あなた方の演技はとても自然で役柄にぴったりと言ったらよいでしょうか、そうみえましたが、一体どこから現れた方々なのか想像もつかないのですが、自分の役と似た出自や背景を持っておられるのでしょうか?それからどうやってケン・ローチ映画での演技を習得されたのでしょうか?

KH: 実はケンとは18年位前に会っていて、別の映画『ナビゲーター ある鉄道員の物語』の時ですが、残念ながらその時は何も起こらなかったんです。それで、今回この話が来たんですが、製作チームがニューカッスルで(リッキー役を)探した後にマンチェスターまでやってきたので、ある週末に会いにいったんです。それで決まりました。ほんとにそんなかんじでした。

司会: お母さん、あ、ごめんなさい、お母さんは?

DH: 私は教育現場で20年働いています。10年間勤めていた高校を退職してからエキストラ俳優の事務所と契約しました。そして事務所がこの映画のことを知らせてきて、夫にどう思うか聞いてみたら「是非やってみるべき」というので、ケンに自分のビデオを送ったんです。そしたらケンと飲みに行くことになって、私としてはもうそれだけで十分だったんです。「わあ、私がケン・ローチと飲みに行くなんて!」というかんじで。でもその後もあって、オーディション、シナリオ、家族のメンバーと会って、本当にあっという間に進んでいったのですが、とても上手く行きました。大きな家族というかんじで。

司会: 君の順番かな?

RS: 製作チームが学校に来て、少しテストをして、なんか気に入られたみたいで、そこから先のオーディションを受けることになって、そんなかんじで。なんて言うか、ここに今いるなんてすごく恵まれていると思ってます。本当に感謝しきれないほどです。みんな素晴らしい人たちなので。以上です。

KP: スペイン語のクラスにいたら私の演劇の先生が入ってきて「誰か演技をしたい女の子はいない?」って訊いたけど、私は手を上げないでいたら「ちょっとケイティ、演劇やってるでしょ、知ってるよ」と言われてオーディションを受けて結局映画に出ることになりました。

司会: それはわかりやすいですね。OK。

5:28

司会: あなたたち、とくに両親役の2人はこの映画出演以前の経験は、ええとあなた(KH)はあったと言ってましたね、つまり演技でなく自分の演じた役柄のような状況を経験したことがありますか?

DH: 私は母親です。仕事はアビーのような介護士ではありませんが、他の人と同じように長時間労働で家族との関係など日々やりくりしています。リサーチは沢山やりました。介護の訓練を受け介護施設で少しの間ボランティアとして働きました。そこで出会った沢山の介護職の女性たちは本当にてきぱきと落ち着いて仕事をこなしていました。介護職の人たちは、なんというか、本来受けるべきものを、、、言葉がでてこないけど、、、受けていません。ああ「尊敬」です。プロ(専門職)に払われるべき尊敬を受けていないのです。受けるべきだと思います。ええと、もう喋れない。。。ごめんなさい。

司会: どうぞ

KH: え?

司会: ああ、いいえ大丈夫です、何か付け加えたいのかと思ったので。

KH: いえ何も。

6:45

司会: OK。映画はニューカッスルという特定の場所が舞台です。何故でしょう?この質問は勿論ローチさんとレベッカさんとポールさんへのものです。

KL: ニューカッスルは北部の小さな街です。そしてとても強い個性があり、他の地域からは少し隔離されています。とても強固な闘争(★)の歴史(伝統)があり、炭鉱や造船業といった古い産業がありましたがもうなくなってしまいました。もちろん見捨てられた地域です。新しい産業はほとんどやってこず、人々は本当に日々奮闘(★)しています。ですから、この映画や前作『ダニエル・ブレイク』のような最も脆弱な状態にある人々の話は彼らにとってごく身近なものなのです。彼らのとても特徴的な声(話し方)やユーモアのセンスといったものはこうした産業と闘争(★)の年月の中で生まれたものです。
 また、足を踏み入れ景色を見てみると、とても美しい街でもあります。さまざまな社会階層もあります。ですから「富」も確かに存在しますが、貧困もあり、多くの人、これはデビーの方が私より詳しいと思いますが、大多数の人はただただ日々もがいて(★)いるのです。暮らしを何とかやっていこうと。ですから、イギリス社会の縮図ではあるのですが、とても狭く凝縮された場所なのです。そして一番素晴らしいのは、ニューカッスルの駅に降り立って人々の会話が聞こえてきた途端に笑みがこぼれてしまうことです。本当に温かい街なのです。心の温かさと寛容の精神で有名な街です。そういったこと全てが(ニューカッスルを選んだ)理由です。

ROB: それにニューカッスルのようなところは移動がしやすいのです。コンパクトで、他の街とも似ていますがもっと狭いので撮影するのも本当に楽なのです。私たちのような年寄りには移動が楽な場所というのはほんとに助かるんです。

(会場笑い)

ROB: そして、とても強いーある意味、他の地域から隔離された場所ですが、北東部ですし、だからこそとても強い独自の文化があります。私たちは『わたしは、ダニエル・ブレイク』の製作を通してその文化に恋してしまったので、また戻れてほんとうに嬉しかったのです。

司会: ポールさん

PL: もう全部話されてしまった気がするけど、本当に素晴らしい所で、人々のバイタリティーというのが感銘を受けるところだと思います。皆さん本当に良くしてくれましたし、こういう素晴らしい俳優たち、クリスの出身のマンチェスターも含め、こういった街の人々と一緒にやれて幸運ですし、本当に多くのものを与えてもらっています。
 『わたしは、ダニエル・ブレイク』や今作でみなさんお気づきだと思いますが、端役などないのです。出番が少なくても端役ではありません。全ての役、ドアの向こうで宅配品を受け取るだけの役や、交通係や警察官の役、全ての役が映画に質感(リアリティー)を与えてくれるのです。そういう全ての役が集まって一つの大きな作品を構築するのです。彼らの貢献は計り知れません。そういう人たちのおかげでこの映画が出来たことは本当に素晴らしいことですし、みなさんに本当に親切に良くしてもらいました。


"Sorry We Missed You" 『家族を想うとき』
2019年カンヌ国際映画祭記者会見 ②へ続く


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