"Sorry We Missed You" 『家族を想うとき』 2019年カンヌ国際映画祭記者会見 ⑦/7

登壇者(発言時表記): ケン・ローチ(KL) / レベッカ・オブライエン(ROB) / ポール・ラヴァティ(PL) / クリス・ヒッチェン(KH) / デビー・ハニーウッド(DH) / リース・ストーン(RS) / ケイティ・プロクター(KP)

SORRY WE MISSED YOU - Press conference - Cannes 2019
with Henry Béhar moderator / Rebecca O’Brien producer / Rhys Stone actor / Katie Proctor actress / Kris Hitchen actor / Ken Loach director / Debbie Honeywood actress / Paul Laverty screenplay / Robbie Ryan cinematography

*留意点*
  • 初めてこのブログを読まれる方は↑TOPメニューの「¿(仮訳)?」も併せてお読みください。
  • 今回は記事の翻訳ではなく、記者会見の動画(音声)聞き起こし→粗訳という形になり、聞き起こしの時点で拾いきれない言葉もあり、より意訳傾向が強くなっています。そのため、タイトルにも「(仮訳)」をつけませんでした。(もう少し細かい話が気になる方は→こちら
  • ()内は訳者註です。また、質問者、その他用語についての参考リンク等がある場合は「☆」で表記しています。
  • "struggle"という単語(動詞/名詞)が繰り返し使われていますが、和訳では文脈で言葉を変えているため、元の単語がそれとわかるよう「★」をつけています。
  • 特に聞き取りに自信のない箇所については「*」と共にその旨記載しています。
  • 各埋め込み動画は該当箇所から始まるよう頭出ししたものです。
※↓⑥はネタバレを含みます!!↓※
Sorry We Missed You" 『家族を想うとき』
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司会: もう1問分だけ時間があります。

40:09

質問者Dennis Broe() : こんにちは、アメリカのインディペンデント・ラジオ局のパシフィカ・ラジオ()とイギリスのCulture Matters()のデニス・ブロウといいます。
 もうずっと長い間あなた方お2人共の映画のファンなのですが、私はアメリカの大学で映画を教えています。学生は主にアフリカ系アメリカ人です。学期ごとに必ず『ブレッド&ローズ』を授業でみせるのですが、学生はみんなあの映画を好きになります。自分たちとものすごく関わりのある話なので。この映画もとても大好きになりました。最初のシーンはものすごく素晴らしいと思います。ギグエコノミーというものそのものを提示していると思います。デビーが(リッキーの)雇用主をしかりつける所も大好きです。あのシーンは観客も拍手を送っていましたね、それもすばらしかったです。
 でも、私の質問は少し嫌な話になってしまいますが、労働者の組織について、何をしなければならないかについてはここでも話題になりましたが、その一方で資本の側は、宅配ドライバーという仕事がサービス市場において2番目に多い職種であることは分かっていますから、彼らはドライバーですら完全に排除しようと無人自動運転車の開発に躍起になっています。
 そこで私の質問は、あなたは保障賃金についてはどうお考えかということです。単に賃金の保障なのか、権利としての、、、

PL: 市民としての収入(ベーシック・インカム)みたいなこと?えーと、ケン、先に喋る?

KL: それ(ベーシック・インカム)はとても興味深いアイデアだと思います。試してみるべきだと思っています。まずはいくつかの街で試験的に。給付の種類や給付対象を決める官僚制度そのものを取り払ってしまうというのは興味深いアイデアです。それをやれば官僚主義的なものはいろいろなくなっていきますよね。
 ただ、結局のところ、それは自由市場経済で生き延びるための応急処置でしかないと思います。その根本的矛盾が解消されない限り応急処置でしかありません。無人の自動運転車ができたとしても、大企業はどこかで利益を生み出さなくてはならないのです。もし労働力の大部分を削ったら、しばらくはそれがコスト削減ということになるでしょうが、その後どうやって競争を勝ち抜けるんでしょうか。
 その一方で、私たちは化石燃料を使った商品を買い続けています。それが地球を壊しているというのに。ですから矛盾は尽きることがないのです。1つの問題を解決しても次の矛盾がやってきます。
 ですから、結局は構造的な変化というものを考えざるを得ないのです。世界の資源を計画的にバランスを持って共有し使うということを。奪い合うのではなく、みんなが持続的に共存できるように。そしてそれをやらない限り、矛盾は次から次へと連鎖してより大きな惨事を招くことになるでしょう。

43:13

PL: ケンに完全に同意します。それから、あなたの質問もとても興味深いと思います。
 これから先の20年、この人工知能(AI)の問題というものは信じられない速さで進んでいくでしょうし、ドライバーだけの話だけでなく、例えばジャーナリストや弁護士といった職業の分野においても大きな問題となっていますし、アルゴリズムも日に日に洗練されていきます。ただし、あなたの質問はデジタル経済という大きな問題についてですが、これを単なる新技術への反発として捉えないように気を付けるべきだと思います。技術というのは、それそのものは中立的なもので、それがどう使われるかが問題なのです。(使い方によっては)大きな解放がもたらされ得るものなのです。
 そこでまた、構造的、政治的な問題、私たちが生活の中でそれをどう共有していくかという話に戻るのです。信じられないくらい巨大な富が、オックスファムが発表したクレディ・スイスの情報によると、たった8人、カンヌでリムジンを持ってるかもしれないような、ザッカーバーグやJFK(*「ジェフ・ベゾス」の言い間違い?)、カルロス・スリムとか、たった8人の資産が全世界人口50%の総資産に相当するというのです。()
 ですからこれは資源・財源の話ではなく、どう使うかという話なのです。そして人工知能という技術はこういったあらゆる問題を呼び起こします。私たちが構造的変革をしない限り、もっと権威主義的、独裁的な政府が現れる未来が待ち受けることになるでしょう。

司会: すみませんがもう終わりの時間のようです。 最後に一つだけ、ローチさん、『わたしは、ダニエル・ブレイク』をカンヌで上映した時、「これが最後の映画になると思う」とおっしゃいましたが、全然違いましたね。これからも映画を作り続けてくださることをお願いしたいと思います。

KL: (照れ笑い) OK。ありがとう。

PL: ありがとうございます。

司会: 皆さんもお越しくださり本当にありがとうございます。

全員: ありがとうございます。


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